福祉用具(5)〔排泄支援用具と介護保険〕。
・排泄支援用具(総論)
尿失禁・頻尿などの排尿障害や、便秘・下痢・便失禁などの排便障害にかかわる年齢、性別に関係なく起こりうる障害であり、そのケアにおいていくつか注意すべき点があります。
まず、ことが排泄行為にかかわるものであるため、本人の心理的身体的負担が相当に大きいことを理解した上での対応が、排泄ケアをする側に必要となります。
排泄という行為はある意味で人間としての尊厳にかかわる側面をもっており、本人としても、できることならば最後まで他者に委ねたくない部分であることは、感覚的にお分かりいただけると思います。
加えて、排泄は一日のうち数回、24時間の中で不定期に行われることから、その度に行われるケアは本人にとっても、また面倒をみる家族の側にとっても、そのまま心理的・身体的負担の増加へと直結することになります。
また排泄介護時において、排泄臭に一日に数回接することになるため、ケアをする側のストレスや負担感も、日々の介護の中でどうしても強まっていくことになります。
介護側のこのような負担感があまりに強まった場合は、排泄回数が減るようにとわざと食事をさせないとか、粗相をした要介護者を叩くなどの介護虐待につながるケースも想定されるところであり、また現実に、そのような事例も発生しています。
したがって、本人のみならず、「排泄ケアをする側の負担感」を減らしていくために、排泄ケアをする側の視点にたった支援用具の適切な利用、といった考え方も必要になってきます。
たとえば、排泄物の臭いを軽減するようなタブレット(錠剤)の利用や、バケツ内の排泄物の処理時の抵抗感を減らすため、バケツの洗浄をしなくてすむ排泄物処理パックの利用などを考える、といった例が想定できます。
現在、排泄関連の用具・用品は、数千点近くあると言われています。その中においては、当然ながら介護保険の利用が可能なものと、利用できないものがあります。
介護保険で定める排泄に係る福祉用具は、購入・使用後の返品・交換ができないため、すべて購入することになります。また当然ながら、購入前に試用してみることも、難しいのが現状です。
そのため、検討をおろそかにして不適切なものを購入してしまうと、返品もできずに経済的なダメージが大きくなる、というデメリットがあります。
よって、排泄関連の福祉用具を購入・導入する前においては、福祉用具相談員やケアマネジャーらと事前によく相談し、要介護者の日常の生活に照らしあわせて、それらの福祉用具が彼らの生活の中に組み込まれた場合にどうなるのか、といった諸点についてよく確認しておくことが大切になります。
なお、介護保険で認定されてない用具については、各市町村が独自のサービス施策を提供している場合もあるので、それらを利用できるかどうかについて、各市町村に確認しておくのがよいでしょう。
個々の排泄支援用具に関わる説明については、福祉用具(6)〔腰掛便座・特殊尿器〕。をご参照下さい。
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