介護機器・福祉用具選びのポイント。
介護保険利用の有無に関わらず、介護用品・介護機器・福祉用具を選ぶにあたっては、とりわけ以下の点に注意したいものです。
・利用者本人の現在の状況を把握して、その意思を尊重する。
介護が必要な高齢者は意思表示が困難な場合がありますので、家族や介護スタッフが、利用者の行動をよく観察し、その福祉用具を使った場合に生活がどう変わるかについて、本人の意思を尊重し、その能力と照らし合わせながら、判断していく必要があります。
・家族と一緒の場合、その生活へも影響を及ぼすため、家族の同意が必要。
福祉用具の使用は、利用者本人だけの問題ではありません。
その利用によって家族の生活の快適さが失われ、生活導線が不便になるようでは、めぐりめぐって利用者本人にとってもよい結果をもたらすとはいえないでしょう。
住環境や家族との生活といった面も考え合わせ、ケアマネジャーを交えて家族ともよく話し合い、一緒に生活する家族の同意も得たうえで、選択・購入・利用に踏み切る必要があります。
・普段から、介護機器の展示場などにも積極的に足を運んでおく。
福祉用具は、実際に試したり相談したりする場が、全国的にまだまだ少ないのが現状です。
利用者自ら、または家族など関係者が、日頃から機会をとらえて、介護用品・福祉機器の展示会や、福祉センター等が開催する「福祉機器展示コーナー」等に、積極的に足を運んで実際に器具・用具に親しんでおきたいものです。
最新の福祉機器の展示会などの開催情報を、インターネットで入手したり、あるいは「在宅介護支援センター」や「介護普及センター」などから入手して、できるだけ実物を見て触れる機会を、日頃から増やしていくようにしたいものです。
・レンタル・購入どちらにおいても、お試し(試用)は必須。
介護機器・福祉用具においては、カタログを見ただけでいきなり購入することは、厳禁とすら言ってよいでしょう。
利用者の日々の生活環境のもとで試用し、本人に適合するかどうか、使いやすいと感じるか、対処できないほどに不便な点はないか、などについて、どうしても確認する必要があります。
・レンタル品は消毒済なので、理由もなく敬遠しない。
現在、レンタルの福祉用具は利用後・再レンタル前に消毒をきちんとすることが事業者に義務づけられており、清潔さを保つことへの配慮がされています。
「誰が使ったかわからないから」といやがる高齢者がいますが、まったく敬遠する必要はありません。
たとえばレンタルの車いすは、利用者の身体の大きさにあわせてサイズを変えられるタイプのものが今日では一般的であり、加齢や症状の悪化によって変化する高齢者の身体状況にあわせ、サイズの調整や交換を行なうことができます。
また介護機器類は技術の進歩に伴い、日々その性能がアップしていますから、タイムリーに新しいものに交換できる余地はやはり残しておきたいものです。
そもそも高価な車いすや介護ベッドを購入してしまった後は簡単に買い換えることもできず、長期的に利用者本人の日常生活の質を損なうことにもなりかねません。
・すぐの利用でなくても、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員との関係を深めておきたい。
いざ介護保険を利用する段になってからあわてて動き出すよりも、利用者が暮らす地域の「地域包括支援センター」で相談支援業務を行っていますので、差し迫った用件がなくとも、まずは利用してみましょう(なお「地域包括支援センター」については、姉妹サイト「介護施設と介護老人福祉・保険施設 その種類と役割」の「地域包括支援センター」「在宅介護支援センター」。を、あわせてご覧ください)。
日頃から相談に通っておくことで、社会福祉士や主任ケアマネジャーとも、ある程度顔なじみになっておくこともできます。
実際に利用する段階で必要な情報をすばやく得られるよう、ある程度ルートをつくっておきたいですね。
またそれは、本来介護保険が想定する「介護予防」の実践にもつながることになるでしょう。「備えあれば憂いなし」ですね。
・利用者の生活環境をとりまく特有の事情についても、配慮する。
北海道・東北といった雪国においては、冬の外出時には雪の多い環境・寒い気温の中で素手を出したり、しゃがんだりといった動作ですら、利用者にとって大きな負担となる場合があります。
関東圏などでは、真夏の猛暑日が続く中、汗を拭くために片手をなるべく空けておきたいといった場合にも、介護機器を片手でスムーズに操作できるか等の状況が想定されます。
このように、春・秋に通常の使い方をしていた福祉用具が、季節変動によってそのまま使用できないといった場合もありますので、改良や組み合わせでそのような外的状況の変化に対応できるか、といった点にも、選択にあたって配慮する必要があります。
すべての記事(記事一覧)は⇒ こちらから